tØ(tZERO)による大規模ICOが来月に始まる
Overstock.comの子会社tØは、11月にICOを始めると正式に発表しました。
この前ラスベガスでやっていたMoney2020というカンファレンスで明らかになり、ICOはSAFTsトークンを発行することになります(Simple Agreements for Future Tokensの略)。
Tゼロトークンは、この会社がつくるATS(Alternative Trading Syste)というシステム内でトレードされることになります。同システムを作りにあたりArgon GroupeとRenGenという企業と協業し、SAFTのトークンセールをします。
Overstock.comのCEO兼tØの会長であるPatrick Byrneは、
「多くの人は疑問に抱いていましたが、信頼度の高いスケーラブルなブロックチェーン技術をつくりあげるためにtZEROチームは懸命に働きました。これらの取り組みはクリプトコミュニティだけでなく、既存のグローバルな機関投資家の興味を引いています。」
と言っています。
Byrne氏は今月The International Business Timesに対し、”そのトークンはプラットフォームの支払い使われるためのものである”と話した際に、ICOの単語を口にしました。
彼は適格投資家の参入次第で、$500 millionをセールで集めると予想しています。
(Filecoinの記録抜くのか…)
ICOはまずPre-saleという形で11月15日から12月31日まで行われる予定で、集まった資金は、システムの開発や規制チームを雇うなどに使われる予定です。
参考:https://www.coindesk.com/overstocks-launching-initial-coin-offering-next-month/
Polkadotとは | ブロックチェーン間をつなぐ Web3プロジェクト
Polkadotとは
今ICOを実施しているPolkadotは「Web3」という団体の最初のプロジェクトです。
Web3は Gavin Wood氏(EthereumをVitalikと共に開発した)が中心となっている団体で「サーバーのない、分散したweb」をVisionに掲げています。いわゆるWebの次世代規格を構想しています。
分散型のwebソフトウェアプロトコル上でのアプリケーションを作ることが目的ですが、特に最新の暗号学を用いて分散化を保護することに注力しています。
(ちなみにPolkadotは英語で水玉模様の意味)
Web3の活動およびPolkadotについてはGavin自身の動画で語っているので、見てみてください。
今度この内容も少し説明しようと思っています。
今回はmediumの記事を和訳しました。そのあと自分の解釈をすこし補足しています。
Polkadot is coming...
――
我々は今日までたくさんのブロックチェーンとその関連プロジェクトが形になっていくのを目撃してきました。中には、とても機能的でEthereumのようにオープンなものもあれば、一方でZcashのように非常にプライバシー性の高いものまであります。他には、企業の制限条件を満たしてプライベートに運営するために設計されたものも出てきています。
未来には、多種多様なブロックチェーンがそれぞれの特有の、そして1つのことに特化したような状況になるでしょう。現在は、これらのブロックチェーンネットワークは隔離されていて、何もコミュニケーションを取らず、相互運用性(interoperability)もありません。これは課題であり、安全にトラストレスな経済圏を作って当たり前にしていくためには、対処すべき課題といえます。
ポルカドットはブロックチェーンをつなぐネットワークであり、様々なブロックチェーンがメッセージのやり取りをできるようになります。
これはものすごく重要なことで、Web3の新しいエコシステムを作るのに大きな役割を果たします。
分散化されたアプリケーション(decentralized appsでDappsとよく言われる)がある世界において、相互やりとりするブロックチェーンは、Dappsに大きな可能性が与えます。(つまりDappが使われる幅が広がるためです。)
privateとpublicのネットワークとオラクル(現実世界からデータをとりブロックチェーンとやりとりをする部分)は素晴らしい分散化サービスを提供するでしょう。
But How?
セキュリティは、Polkadotのエコシステム内にプールされます。これは何かというと、個別のチェーンが最初にトラクション(牽引力)や信頼を得ることなしに "集団安全保障" を利用することができます。
Polkadotはさらに、個別ブロックチェーンがもつスケーラビリティ問題を緩和することもできます。並列にトランザクションを走らせることで、それらをパラチェーンとして一度に取引をしてしまうことができます。(parachain)
我々は、トークン所持者がプロトコルを超えて完全コントロール権を持つようなブロックチェーンを創り出しています。つまりすべての権限はリレーチェーンの参加者(トークン所持者)に渡されます。(他のチェーンでいうとマイナーに与えられているような権利のこと、例えばプロトコルのアップデートや修正などのガバナンスのこと。)
(※PoSといったほうが早いですね。)
これらがpolkadotトークン所持者に、昔のトレストモデルではない分散型の全く新しいシステムを想像させるでしょう。そして、複数のブロックチェーンを超えた共通のネットワークを作ることを目的としています。
そしてその上にのるチェーンやサービスは、みんなが作ることができます。
――
以上が和訳でした。
簡単にいうと、様々な種類のブロックチェーンをつなぐネットワークということです。パブリック・プライベート両方のブロックチェーンをつなぐことができ、価値の交換だけでなく、情報の交換もできます。トラストレスなトランザクションがシームレスにエコシステム間で連携し、点と点をつなぐような具合で。(Polkadotという名前の通り。)
確かに、個別チェーンごとの特徴に特化して多くのチェーンが存在するため、どれが残る / どれが勝つなどと議論がされてきましたが、「共存を許容しお互いの経済圏を繋いでしまって、分散型アプリがより身近になるようにする」というのは実現すれば理にかなっていることに思えます。
つまりAチェーンでしたか使えないアプリがBチェーンでも使えるようになります。もちろん送金系はアトミックスワップでチェーン間の差異をなくすという方向になってきていますが、Dappまでもがチェーンの差異をなくすというのがトレンドのようです。
例えば、これを使うと、ブロックチェーン関連会社がクラウドセールを行うときに、参加者に銀行のプライベートチェーンでの承認を必須とすることができます。
またハリケーンIrmaがこの前アメリカですごかったですが、そのときも天気オラクルがハリケーンを確認し、IoTオラクルがその家の持ち主のダメージを観測するとして、その情報を元に、保険会社のブロックチェーンが損害に対する支払いを自動でトークンで実施することができます。
分散型の取引所のparachainができたとすると、Zcashのparachainを使って、匿名でビットコインの預入れができるようになります。(ビットコインでもZero knowlede proofが使える。)
トランザクションを複数レイヤーにしてスケーラビリティ問題に対応するのは新しくて、NEMなんかは最近利用用途やICOが増えてきて将来スケーラビリティ問題に直面する気がしてきているので、それらブロックチェーンへのソリューションとして良いものが出てきたという印象です。
またGavin Woodがリードしているプロジェクトなので期待をしているところです。
他にもvalidatorとか触れなきゃいかないところがありますが、次回ポストでまとめます。
Medium-of-Exchangeトークンモデルの価値評価 (Vitalik Website)
イーサリアム創始者のVitalik Buterin のwebsiteの記事を和訳し、少しわかりやすく意訳しました。
On Medium-of-Exchange Token Valuations
最近の多くのトークンセールプロジェクトの中で一般的になっているトークンモデルの1つが、「network medium of exchange token」(交換用トークンのネットワーク媒体モデル)です。
この種のトークンを扱うプロジェクトのピッチは、多くは次のような感じになります。
「私たち開発者は、”ネットワーク”を構築していて、これを使えば新しくていいことができます。これはシェアリングエコノミーのスタイルのシステムです」
「このネットワークは純粋に売り手と、買い手がセットでいて成り立っています。(売り手は、あるプロトコル内のリソースを提供し、買い手は、この両方コミュニティによって完成したサービスを購入します。)
しかし、このネットワーク内での購入と販売は、私たちが発行する新しいトークンで行われる必要があります。そのためこのトークンは価値を持ちます。」
売り手となるのが、開発者自身であれば、これは納得のいくものであり、Kickstarterスタイルのプロダクト販売と本質的に非常に似ています。実際そのトークンは、開発者が提供するサービスにより価値が決まっていきます。
単純な経済モデルで何が起こっているのかを説明すると、上の例をより詳細に説明することができます。
開発者が$ x(という価格)で彼らの製品をリリースしたいとします。そしてN人の人々がその製品を評価し、かつN人の人々は「開発者が製品に完成させることができる」と信じている、とします。
開発者はセールを開始し、$ w < x となる $w(という価格)でN個を売り上げます。つまり合計収益は、$ N * wとなります。
開発者は実際に製品を作り、買ってくれた人に提供をしました。
これであれば最終的に購入者も、開発者もお互い満足の結果になります。この時、やれなければよかったというようなことは誰も感じず、全員の期待が満たされます。この種の経済モデルは明らかに安定していると言えます。
ここで、”medium of exchange”(交換の媒体)トークンを使った場合を見てみましょう。
N人の人々は、分散ネットワークにできる製品に対して、「$xの価値だ」と評価します。その製品は$ w <xの価格で販売されます。
N人の人々は $wという価格相当のトークンを買うことになります。
そして開発者は、ネットワークを構築します。
そして売り手が、ネットワーク内で$ wの製品を提供し始めます。
買い手はトークンを使ってこの商品を購入し、$ wのトークンを費やして$ xの価値を得ます。そして売り手はこの製品を作るのに、$wよりも低い、$ v <wのリソースと労力で、$ wの価値のトークンを持つことになります。
ここで、経済モデルのサイクルが完了していないことに注意してください。そして実際、そのサイクルは完結することはないのです。トークンがその価値を持ち続けるためには買い手と売り手の継続的な流入が不可欠です。
厳密に言えば、その流入とは必ずしも無限に継続的である必要はありません。もし売買が発生する各ラウンドにおいて、「次のラウンドがあるという可能性」が v / w 以上の場合にはこのモデルは機能します。例え誰かが最終的に騙されるとしても、個々の参加者がその騙される人になるリスクは、参加して得られる利益よりは低い。
もちろんトークンは、v / w < f < 1 となる因数 f を掛かることにより、各ラウンドで価値が0になるまで下がる可能性もあります。しかしそうなってもトークンセールに参加しようと思う人いる可能性もあります。
したがって、モデルは理論的に実現可能ですが、単純な「販売者としての開発者」モデルよりも、このモデルがいかに複雑で難しいかが分かります。
伝統的なマクロ経済学には、medium of exchange(交換の媒体)を評価しようとする簡単な方程式があります。
MV = PT
与式において:
Mは総貨幣供給量です。つまり、コインの総数です。
Vは「お金の速度」です。つまり、コインの所持者が毎日入れ替わる回数
Pは「価格水準」です。これは、商品やサービスの価格をトークンの観点から表したものです。通貨の価格の逆数です。
Tは取引量です。:1日の取引の経済的価値。
簡単な例で式を立てると:
もしNコインがあり、1日にM回ずつ所持者が変われば、これはM * Nコインの、1日に取引される経済的価値です。もしこれが$ T相当の経済的価値を表すならば、各コインの価格はT / M * Nなので "価格水準"はこれの逆数、M * N / T となります。
より簡単な分析のために、2つの変数を使うことができます。
・1 / Vは、ユーザがコインを使用して取引を行う前の時間である「H」と表現できます。
・1 / Pは、通貨の価格である「C」(C =コストと考える)と表現できます。
そうすると、与式が:
M / H = T / C
MC = TH
となります。このとき左辺は、とてもシンプルで「時価総額」です。右辺は、1日に取引される「経済的価値」に、ユーザーが取引するまでコインを「保持している時間」を掛けたものです。
これは”定常状態”のモデルであり、ユーザーの数は変わらないことを前提としています。しかし、実際には、ユーザーの数は変わる可能性があり、それによって価格が変化する可能性があります。ユーザーがコインを保持する期間も変わる可能性があり、ともなって価格も同様に変化する可能性があります。
ユーザーに与える経済的影響をもう一度見てみましょう。普通のETH(またはビットコイン、またはUSD)ではなく、組み込みのトークン(例えばappcoin)を持つアプリケーションを使用することでユーザーは何を失っているのでしょうか?
これを表現する最も簡単な方法は、”implicit coist”(暗黙のコスト)であり、そのようなシステムが課した、コインをユーザーがその期間保持するためのコストです。
このコストには、認知コスト、交換コストとスプレッド、取引手数料などの多くの要素があります。この暗黙のコストの特に重要な要因の1つは、予想損失(期待損失)です。もしあるユーザーが、appcoinが年間1%だけ成長すると予想し、その他の選択肢が年間3%増加すると予想し、5日間$20のappcoinを保持した場合、約20ドル* 2%* 5/365 = $ 0.0054の予想損失(期待損失)です。
この洞察からまず言える結論の1つは、appcoinが非常に多くの多重平衡ゲームであることです。 もしappcoinが年間2%で成長すると、手数料は$ 0.0027に低下します。これにより、アプリケーションの「デファクト・フィー」(事実上の手数料)が2倍安くなり、ユーザーが増え、価値が高くなります。しかし、もしappcoinが年10%で落ち始めると、 "事実上の手数料”は$ 0.035に増加し、多くのユーザーを追い払うことになります。
これは市場操作者に機会を与えてしまうことにつながっています。つまり、市場操作者は、単に1つの均衡に対抗してお金を浪費するわけでなく、1つの均衡から他の均衡に、うまく通貨を振り向けることができ、そのシフトの中で市場予想から利益を得ることができる可能性があります。
また、パスの依存性が大きく、確立されたブランドにとって大変重要となります。 ちょうど、Bitcoinブロックチェーンのフォークのどちらが、Bitcoinと呼ばれるかを争う、壮大な戦いを目の当たりにしています。
もう一つの重要な結論は、appcoinの時価総額は、保有期間Hに大きく依存するということです。もし誰かが非常に効率的な取引所を作ったとしましょう。するとユーザーがリアルタイムでHを購入してすぐにアプリケーションで使用でき、売り手がすぐに現金を出せるようになるとすると、時価総額は急落します。
もし通貨が安定している、または見通しが楽観的に見える場合、そこまで問題ではないでしょう、なぜならユーザーはそのトークンを保持することで不利に感じていないためです。(つまり、「事実上の手数料」はゼロ)
しかし見通しが悪くなり始めると、先程までうまく機能していた取引所が、その通貨の悪化を加速させてしまいます。
人々は取引所というのは本質的に効率が悪いと思っているかもしれません。ユーザーはアカウントを作成し、ログインし、コインを入金し、36承認を待ち、取引、ログアウトと、ばならないと考えるからです。
しかし実際には、「効率の良い取引所」はもうすぐ実現するでしょう。ここでは、スレッドが立っていて、完全な自律的な同期オンチェーントランザクションの設計について議論が行われており、「トークンAをトークンBに変換し、受け取ったトークンBを使用して何かをする」ということが単一のトランザクション内で実現できる、と議論されています。他の多くのプラットフォームも今まさに開発がされています。
これらのことが示すことは、「トークンの価値をサポートするためmedium of exchange議論に完全に頼ることは、お金を印刷しているかのようになり魅力的だが、その考えは非常に脆い」ということです。
このモデルを使用するプロトコルトークンは、トークンを保持する暗黙のコストがゼロである非合理性および一時的な平衡により、しばらくの間持続すする場合もありますが、常に崩壊するリスクが避けられないようなモデルなのです。
では代替となるのは何なのでしょうか? 1つのシンプルな代替方法は、「アプリケーションがインタフェースで手数料をシンプルに回収する」というetherdeltaのアプローチです。
1つのよくある批判は:「でも誰かが手数料を取るためにインターフェイスをフォークできませんか?」というものですが、言い返しとして、「あなたのプロトコルトークンをETH、BTC、DOGEなどなんでもに置き換えるために誰かがインタフェースをフォークすることもできます。」というものです。
さらに良い主張としては、「それは難しい、 なぜなら”海賊"バージョンはネットワーク効果のための "公式"バージョンと競争しなければならないので。」ともいえますが、
「手数料を払わないクライアントとのやりとりを拒否するような、手数料を払う公式クライアントを簡単に作成することもできます」ということもできます。
この種のネットワーク効果ベースの施行は、ヨーロッパやその他の地域で付加価値税が一般にどのように施行されるかと似ています。公式クライアントの購入者は公式クライアント以外の販売者とは交流しません。公式クライアントの販売者は公式クライアント以外の購入者と交流しません。
なので、手数料を回避するためには、多数のユーザーが一気に”海賊版”クライアントに切り替える必要があります。これは完全に堅牢ではありませんが、新しいプロトコルトークンを作成するアプローチと同じくらい優れていると言えます。
もし開発者が、最初の開発に必要な資金を集めるために前倒し貸付したい場合は、支払われたすべての報酬でトークンの一部を買い戻してそれをバーンするという性質を持つトークンを販売することができます。これにより、トークンの価値が、「システム内で費やされる今後の手数料の将来の期待値」によって支えられます。
ユーザーにユーティリティー・トークンを使用して手数料を支払うようにし、ユーザーがトークンをまだ持っていなければインターフェースが取引所を使用してトークンを自動的に購入するようにすることで、上の設計をより直接的なユーティリティー・トークンに変換することができます。
重要なことは、「トークンが安定した値を持つためには、トークン供給にシンク(掃き溜め)を持たせることが、非常に有益である」ということです。つまり、トークンが実際に消え、合計トークン量が時間とともに減少する設計のことです。この方法では、ユーザーが、変動が大きく計算の難しい「事実上の手数料」ではなく、より透明性が高くてわかりやすい手数料を支払うことになります。またこの方法では、プロトコルトークンの価値は何であるかが明らかで、わかりやすくなるのです。
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