The Coffee Times

シゴト・英語・テクノロジー・人生の楽しみ方を発信してます

NEMの2つの特徴 | そしてそのブロックチェーンは、世の中を変えていけるか #NEM(XEM)

 NEMの良い点にフォーカスし単純にして書こうと思ったのが動機である。最近では知名度があがり、さらに日本では熱心なコミュニティのおかげで、加熱と思えるほどの盛り上がりを見せている。しかし未だに価格に対する情報が先行し、創り出そうとしている未来や、それを可能とする技術と思想について書かれることがあまりに少ない。

そこで基礎的な情報から、2017年10月時点で新しい情報についても書いてみたので、お時間のある際に読んで頂きたい。

 

さて端的にいうと、NEMの良さ・特徴とは、ブロックチェーンインフラとして、

1)セキュア、2)簡単という点である。

 

(前提として、NEMはゼロから100%新しいコードで書かれている。既存プロジェクトのフォークではない。NEMが生まれる前、一般的にブロックチェーン上での実装は難しいものであり、ブロックチェーンはどうあるべきかを3人のCore developersたちは考えた結果、ゼロからコードを書き始めることに決めた。それゆえ今日では他のブロックチェーンとは一線画す利点を持っている。もちろん開発者たちが優秀だからでもある。)

 

セキュア

NEMはセキュリティが優れていると一般的に言われている。価値のインターネットと称され、インターネットの上に資産情報が載る仮想通貨では、セキュリティの重要性はいくら強調してもしすぎることはないだろう。

NEMでは、EigenTrust++というノードの重要性の決めるためのアルゴリズムを採用しており、ネットワークのセキュリティを強くしている。さらに局部的スパム防止の手法を用いており、ネットワークの処理能力が限界になったときに、スパムを試みるノードのみをシャットダウンさせることができる。これらは他の暗号通貨にはないNEM独自の特徴だと言える。

さらにNEMは2層構造の設計がされているため、ウォレットを使いたいとき、ノードやブロックチェーンのコピー・同期を必要としない。ノードに接続しさえすれば、すべての機能をセキュアに使うことができる。

 

さらに2016年6月のTheDAO事件以来、「全てのスマートコントラクトはブロックチェーン上に置かれるべきではない」という思想に自信をもっているようである。

Ethereumではスマートコントラクトを自分自身ですべて書かないといけないし、それは開発者でないとできない、しかも正しくスマートコントラクトをプログラムとして書くことは非常に難しいことだ。

(それでもEthereumはものすごい発明だし、批判しているわけではない。Ethereumもものすごい数のEIP(改善提案)が議論されていて今後よりよくなっていくはずだし、多用途で柔軟性の観点で言えば間違いなくNEMを凌ぐ。)

Nem.ioVPを務めるJeff氏も、「Ethereumは大好きで将来性もあり素晴らしいが、扱いが難しいため、テストや成長に時間を要すると思う。一方NEMはもう準備ができていて実用フェーズにある」と言う。

 

それではそんなセキュアなノードたちを構築するインセンティブは何かと疑問に思う人もいるかもしれないが、そのインセンティブこそSuper nodeプログラムだ。帯域等の基準を満たした "良いノード" に対し、毎日報酬が支払われる。この資金はnem発足当初にSN用としてリザーブされていた。
将来このスーパーノードの報酬源が尽きた時はどうするのか?という議論は現在もされていて、財団から新たに支払われるとか、その頃には取引量が多く取引手数料でまかなえるだろう、など、いくつかの案が出されている。
(ちなみにこのスーパーノードを代行で行う "マスターノードバンク"というサービスも出ている。
https://www.masternodebank.com/)

 

またこれは参考であるが、ある調査結果がセキュリティの堅牢性を示した。

画像:

f:id:CoffeeTimes:20171008210100p:plain

 

これは中国の非営利団体サイバーセキュリティセンタ:China Certの調査である。

この調査では赤色が深刻な問題、青色が問題を示しているが、NEMは注目に値する結果を出している。赤色はなく、青色の問題も他のプロジェクトと比べて少ない。毎1000行のコードのうちバグは0.28とトップクラスを誇る。

もちろんこの調査がすべてのプロジェクトを対象としているわけでなく、これが結論を言うには早すぎるが、高い堅牢性を証明する1つの例である。実際に(今のところ)致命的な問題で障害を起こしたことはない。

この理由はCore Developersたちがテストを頻繁に行っているからだと彼らは言う。モバイルウォレットはwebサイト上でSoonと表記されてから1年ほどの年月が経ってやっとリリースされるほど長引くこともあるが、その分時間をかけてテストしている。だから出したものは安定している。

 

簡単さ

これがNEMの特徴としては大きい。つまりDeveloperのための環境として簡単に扱うことができる。そしてそれを実現可能にしているのは、APIである。APIがあるプロジェクトは、ない場合とくらべて開発が楽になる。(まだAPIが親切でなく解析に時間がかかるという声やバグもあるという声もあるが)

開発者がわざわざ新しいコンピュータ言語を学ぶ必要も、スマートコントラクト書く必要もない。デベロッパーとしての最低限のレベルであれば触れる状態になっている。

これを裏付けるストーリーとしてよく海外のMeetupJeff氏が話すエピソードがある。

 

韓国で開発者コンファレンスを行った。1時間の間、nemとは何かを話し、APIの使い方を伝えた。

その後、あるタスクを課した。「nemアカウントとtwitterアカウントをリンクさせてnano wallet内にモジュールとしてアプリを建てる」という課題で、うまくいった人にはbounty(報奨金)をあげるというものだ。

すると、ある開発者から次の日の朝、成果物が届いた。彼は徹夜して1日でやってのけたのだ。

さらに彼はNEMをそれまで聞いたこともなければ、ブロックチェーンでの開発経験も何もなかった。それでも完全に暗号技術・NEMブロックチェーンを使ったものが出来上がった。

 

この開発の容易さは、他のブロックチェーンのそれとは大きく異なっていて、NEMがメインストリームでのブロックチェーン活用を目指すという思想がわかる。

だからこそ、この記事で紹介している、いくつものプロジェクトが立ち上がっている。そしてそれらの開発者は片手間に、仕事の合間や週末に開発していることがほとんどであるという。

その進行中のプロジェクトの前に、nemの標準機能として提供されているものも紹介するが、操作者ユーザにとっても簡単に操作でき、基本クリックで実現する。

 

 

nano walletで提供される標準機能 

 

スマートアセット(モザイク)

NEMでは普通の人が、簡単にトークンを作れる。自分の通貨、例えば " CoffeeTimesコイン " を作ることができる。NEMの場合これらトークンをMosaic(モザイク)と呼ぶ。クリックするだけで、基軸通貨XEMと性能の変わらないモザイクを作れるのだ。(XEMもモザイクの1種である)

簡単に作れることに加えて、その拡張性も高く、かつ簡単に設定ができる。 

 

モザイク特徴1.転送可用性の有無(Transferable/ Non transferable)

画像:

f:id:CoffeeTimes:20171008211739p:plain

作り出したモザイクは、誰にでもどのアドレスにでも流通されるようになる。上の画像でいうとBillがBillcoinを作り、それが誰にでも送ることができる。

しかしすべてそうする必要はない。例えばエストニアが電子市民権e-Residency

の申請ができるようになったが、その証明としてのトークン、パスポートとしてのトークンなどを作った場合、流通されては困る。そこで、「トークン作った人にだけ送り返すことができる」とか「誰にも送ることはできない」などの設定ができるのだ。

f:id:CoffeeTimes:20171008211855p:plain

 

 

また期限付きの権利をモザイクで与えたとして、期限がきたらeipireトークンを送りつければ良い。そのアカウントをブロックチェーンで確認すればそれがわかるからである。これで様々な権利を電子化・トークン化したり、二次流通市場を整備したりといったことが可能になると考えられる。

 

モザイク特徴2.徴収(levy

f:id:CoffeeTimes:20171008212111p:plain

さらにlevy(日本語で徴収するの意)の機能がある。このモザイクが送信された際に、手数料とは別に、モザイクの発行者に税金が自動的に送られる機能だ。

例えばCoffeeTimesコインを作って、それが流通すると、その取引の際に毎回税としてXEMが作成者に少量まわされる。つまり、流通するトークンを作った場合それだけで税収が入ることを意味する。

※勝手に送られてきて、要らないから何処かに送ると気がつかないうちに税がとられる、という類のスパムも発生しうる。

 

マルチシグ

NEMは権利の委譲に強みを持つ。例えば、アカウントAさんBさんCさんでチームをつくりICOを実施することにする。ICOで金がいっぱい集まった場合、誰が管理するかという問題が発生する。NEMでは、ICOアカウントを用意しそこに資金を集める。そしてそのICOアカウントのマルチシグネチャは3人すべてが鍵を持ち、「3人がOKしたら出金ができる」、とか「3人のうちABOKしたら」とか、「3人のうちBCOKしたら」など柔軟に編集ができる。

また会社などは人の入れ替わりが常だが、マルチシグの権利を持った人がぬけても、新しい人に鍵を譲渡できる。そしてそれもクリックのみで完結する容易さである。takanobuさんのこちらの記事にマルチシグのユースケースが書かれていて面白い。

 

Apostille

所有権が移転可能な、証明書発行ツールである。これも驚くほど簡単に使用することができる。ドキュメントを本物と証明する場合に有効であり、本物かどうかに加えて、アップデート・所持者の情報をブロックチェーンにおいて監査も譲渡もできる。最近では、COMSAのプレセールした証明として、Apostilleされた証明書が参加者に配られている。またつい最近でApostilleされたファイルをシェアできるツールがコミュニティ有志から出来上がり公開された。

 

 

Aggregate Transaction (複合トランザクション)とアトミックスワップ

次期基盤技術であるCatapult Coreで標準装備される機能うちの1つがこれだ。

同技術を使う予定のCOMSAのホワイトペーパーから説明を引用する。

 

複合トランザクションとは、基本的には複数のトランザクションを一つのセットとしてとりまとめて、該当する当事者のマルチシグが完結した場合に、その全てを「同時」に決済できる機能であ る。注目すべきは、これらはマルチシグによって表記順に実行されるのではなく、最終結果の残高 が有効である限りは「アトミック・スワップ」として「全て同時」に実行される点である。言い換えれば、それはCatapultコアでネイティブにサポートされる、複数当事者間のワンタイム・スマー ト・コントラクトである。これは、APIコールによってコントラクトを執行し、長期的且つ反復的な使用を前提にデザインされる複雑なスマート・コントラクトを書くリスクと重責を払拭するという全くを以て新しい考え方である。更には、ワンタイム・スマート・コントラクトは有効な残高ありきで執行可能か不可能かをデザインするものである。したがって、それは長期的な利用が前提にもかかわらず間違って書かれてしまったスマート・コントラクトに比較して、反復的な攻撃に対しての耐性が高く、損失リスクを最小限に抑える事が可能である。

 

 

 

f:id:CoffeeTimes:20171008212911p:plain

具体的なテストの画像だが、ここには3つのトランズアクション、誰が誰に送ったという情報がある。これらをまとめて1つのトランズアクションで処理をするというわけだ。先日、BTCLTCでのアトミックスワップに成功したという盛り上がったが、それを標準装備で実現する。

これまで暗号通貨の取引は、自分が誰かに送金するというPush型であった。それが要求するPull型のトランズアクション始めることができるようになる。

(もちろん勝手に人の資産を「ちょうだい」といって貰えるわけではない。要求をうけた人には通知がいき、その人の秘密鍵で署名が得られれば取引が開始される。例えば、「おれがxxコインほしいんだけど、そのかわりyyコインをこれだけ送る」って通知がきて、受けた人が了承し、署名をすれば、成立。無視すれば、それに関連するトランズアクションはすべて破棄、となる。)

 

この機能が実現する一つの例として、ネットワーク手数料支払いの委任が可能になると言われている。例えば、CoffeeTimesコイン(CT)を作ったとする。それが使えるコーヒー屋も作ったとする。私は友達に5CTをあげる。(1CT= 100円としよう)

友達はコーヒーショップで1 CT使ってコーヒーを飲みたいが、いざ使おうとしたときに使えない。それはネットワークの手数料として支払わなければいけない少額のXEMがないからだ。

ここで従来であれば、BTCを買い、BTCXEMを交換し、XEMをウォレットに移し...という作業が必要になる。しかしこれはあまりにも実用性・現実性にかける。

ここで複合トランザクションを使うと解決できる。友達は、もらった5 CTのうち、少量のXEMに相当する0.2CTを送り、私から1XEMもらうトランズアクションを作り、そのXEMをコーヒーを買うトランズアクションの手数料とする。

つまり実質的にCTさえあれば、取引ができるようになる。これはNEMnano walletに入っているchangellyなどの取引所がネイティブにサポートするのかは不明だが、作ったトークンが自由に使えるようになる未来を見て設計がされている。Catapultは18ヶ月開発を続けているが、COMSAホワイトペーパーにはこうあり、間もなく登場する予定だ。

この新機能は、まずCataputバージョンのmijinプライベートブロックチェーン製品で公開され、2018年にはNEMのパブリックブロックチェーンにも導入される予定である。

以上、大変長くなったが、NEMの良さであるセキュア・そして簡単という点から、今できる機能そして近い将来に実装される機能に触れた。

 

またこちらに、NEMのユースケース・プロジェクトを書いて解説したので、ぜひ読んで頂きたい。

NEMユースケースにみる未来| NEMプロジェクトが世の中を変えていく - The Coffee Times

 

投げ銭は泣いて喜びます..

BTC : 19MnRNP7PEbkkGdL3LqdyuYHaPyj7xA7Eh

f:id:CoffeeTimes:20171104120107p:plain

XEM : NDSKVY-BT4T6R-AGR6DV-PFOWX6-73UIMB-TGWFJD-6NBG)

f:id:CoffeeTimes:20171104120130j:plain