脳と脳をつなげるBrainet(ブレインネット)
脳と脳をつなげて、正常に動作させようと試みる動物実験に関する記事です。
脳に電極を埋め込み、"有機的コンピューティング"を実現することにより、脳単体よりもパフォーマンスを高めることが目的です。
ちなみに、脳とデバイスをつなげて、(物理的にではなく論理的に)意思をデバイスの動きに変える取り組みはすでに多くの研究者の間で実施されています。この記事の義足が一例で、歩く時の脳の電気信号を読み取り、デバイスへと送り伝えます。
しかしこの記事では、脳と脳をつなげることを目的としており"Brainet"と題し実験を行っています。内容は以下のようなもの
1,ラット4匹の脳に電極を埋め込む
2,それぞれのラットに同じ入力信号を送る
3,それぞれのラットの脳の出力信号を解析する
4,3で得た出力信号がすべて揃っていたら、ラットに報酬を与える
これを繰り返したところ、ラットたちの脳の出力信号のシンクロ率は徐々に高まっていったという結果になりました。
その後、別の入力信号を同時に与えたたところ、87%の確率で、元々の入力信号を認識し、正しい出力信号を示しました。この成功率は、1匹のラットが学習して行った結果よりはるかに良かったようです。
もう一つはサルで実験を行っています。
サルAとサルBは脳が回路的につながっている状態にします。それらのサルはコンピュータスクリーンに映るアームを使ってボールを正しい位置に移動させようとします。
しかしサルAは水平方向のみ、サルBは垂直方向にしか、アームを動かすことができません。にもかかわらず、このサルたちは徐々にアームを動かせるようになり、正しい位置までボールを運ぶことができたという結果になりました。
脳がコンピュータのようにつなげることでデータの入れ替えを言葉なしに行うことができるということを示しています。
このBrainetを応用すれば、足の不自由な人と、足が動かせる人の脳をつなぎ、足の動かし方を学ぶことで障害から回復できる可能性があると研究者は語ります。
しかし同時に倫理的な問題がつき纏います。自分の記憶を奪われる、という声も上がるでしょう。私は、脳科学の発展を妨げているのはこの「倫理」という言葉にラッピングされた人間の恐怖心にあると思います。しかし脳はいずれ最適化される運命にあると感じます。脳を解析するには莫大な計算を可能にするコンピューティングが不可欠ですが、量子コンピュータや量子学がそれを超えた日は一気に謎が溶けていくし、人間の好奇心は止まらないと思うのです。